内田麗奈個展 クロマニヨンの夢「どこっレイナっ」下北沢アーツ編

内田麗奈《はじまりはクロマニヨン「私、明日からエルカスティージョにいくかも!」》2022年、紙、鉛筆、木材

2024年3月22日(金) - 4月7日(日)
1-7 pm

休廊日:月・火・水曜日
入場無料
レセプション:3月23日(土)5-7pm

トーク・イベント
2024年3月24日(日)3-5pm
O JUN × 薄久保香 x 内田麗奈
内田麗奈の鉛筆漫画『はじまりはクロマニヨン』制作・出版に関し、背中を押してくれたという画家のO JUNさんと薄久保香さんと内田麗奈が内田の作品について、アートについて、自由にトークいたします。トーク・イベントの後には内田麗奈のサイン会も予定しております。

*レセプション、トーク・イベントはどなたでもご参加いただけます。

O JUN × 薄久保香 x 内田麗奈 トーク・イベント風景

下北沢アーツは、内田麗奈個展「クロマニヨンの夢『どこっレイナっ』下北沢アーツ編」 を開催いたします。内田は、1993年愛知県生まれ、2017年に名古屋芸術大学美術学部美術学科洋画2コース卒業、2019年に東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻(油画第一研究室)を修了しています。

内田は、東京藝大大学院に入学した直後、教授から「今までやってきたこと全部捨てろ。始めから始めろ。」と言われ、どう制作をしていけば良いのか全く分からなくなってしまいます。そこで、教室内の物置を黒いシートで覆い真っ暗な部屋で過ごし始めました。
闇の中で過ごしながら「どうしたら光が作れるだろう?」ともがき悩み続けた内田。そして、何もない壁にカーテンを作ることで、「光」が差し込む心の中の「窓」を想像できるという考えに行き着き、カーテンの作品を制作し始めます。真っ暗な部屋にいる自分を真っ暗な洞窟で暮らしていた石器時代のクロマニヨン人と重ね合わせ、洞窟壁画をモチーフにした「カーテン」の作品「クロマニヨンの夢」シリーズの誕生です。

さらに内田は、「クロマニヨンの夢」シリーズの「窓」から見える景色として鉛筆漫画『はじまりはクロマニヨン』を描き始めました。内田自身を投影したクロマニヨン人のレイナを主人公に、絵を描くことが大好きなレイナが洞窟画家を目指すストーリーです。登場人物は内田の周囲の家族、友人、先生などがモデルとなっており、内田自身の経験を基に、レイナがもがきながら成長し、自分の表現を追求していく姿がポップな雰囲気で描かれています。2023年の夏にはアート専門の出版社アートダイバー社より『はじまりはクロマニヨン』第1巻が発売され、各書店やミュージアムショップなどに置かれています。

本個展では『はじまりはクロマニヨン』第1巻のその後のストーリーを基に、『はじまりはクロマニヨン』の登場人物が観ている景色として描いた風景画と連結させたカーテン作品「クロマニヨンの夢」を組み合わせた新展開作品や漫画の原画などをご紹介します。石器時代と現代を行き来しながら、カーテン、油画、漫画と自分の世界を表現し続ける内田麗奈の世界をぜひお楽しみください。

内田麗奈個展 クロマニヨンの夢「どこっレイナっ」下北沢アーツ編 展示風景

アーティスト・ステイトメント

私は大学院の時、真っ暗な部屋で過ごしていた時期がありました。微かな明かりで、油絵の具もハッキリとした色すら分からない。でもどんな場所であろうと、私にとっての 「光」を作らなくちゃいけないと感じました。そうしなければ生きていけない!自分の制作において右も左も分からなくなってしまった状態の中、真っ黒な空間で「光」を作ろうともがいてたのです。きっとあの時過ごした日々は、人間が洞窟の中で暮らしていた石器時代にタイムスリップしていた時間だったんだと感じます。
あの暗い空間で、私は「窓」が欲しくなりました。「窓」を想像したくなりました。 当時のクロマニヨン人達も「窓」が欲しかったんじゃないかと感じるんです。私が経験したように、光...夢や希望を求めた気がするんです。たとえ太陽が無くなって、人口の太陽ができたとしても、人は「窓」を作るでしょう。そうして生まれた作品が「クロマニヨンの夢」です。

「クロマニヨンの夢」は、洞窟壁画を想うことができる土色のクラッシュベロア生地に油絵の具を使って描いています。洞窟みたいに波打った壁...カーテンです。現代の何もない白い壁にカーテンを作ったら、「窓」をイメージできると思いました。
今の私にとって、カーテンが開いてる状態と閉じている状態は、世界を見ることと共通しています。両方大切にしたいのです。例えるなら、瞼を開けたり閉じたりすることと似ています。起きている時は目の前のものが視界に入りますが、寝ている時は視界に入った出来事から構築されて夢を見ます。頭に浮かぶイメージと現実...両方を補うものであり、世界を見ることが出来るひとつの手段なのです。
カーテンも同じです。カーテンが閉じている時は見えない窓をイメージ出来ます。カーテンが開いている時は、その時に見たい景色として好きな絵や写真を窓にして飾ることが出来ることに気がつきました。無限に「窓」を想像出来るし作れる...!その喜びに想いを寄せて、今も作り続けています。

内田麗奈個展 クロマニヨンの夢「どこっレイナっ」下北沢アーツ編 展示風景

ベロアの洞窟カーテンを開けた先に「窓」として、「はじまりはクロマニヨン」という鉛筆漫画を執筆し始めました。クロマニヨン人の少女が洞くつ画家になっていく物語です。主人公は2万年前の私です。スケッチブックを破って鉛筆で描き始めました。
主人公レイナは頭に浮かぶイメージを土の上や砂浜や木に描いても、波や雨や動物や自然の猛威で消えてしまうことが悩みです。恋人のタイスケに見せたくても見せることができない状況が続きます。なんとかして見せたい!描いても消えないようにする方法を探す為に、芸術の聖地エルカスティージョ洞くつに向かうところから物語は始まります。

イメージが消えてしまう時代になんとかして残そうとしたクロマニヨン人たちに焦点を当てたストーリーですが、彼らが抱えていた悩みは私たちも同じ悩みです。私が大事にしていることは「今をどう描くか、今どう生きていくか」。悩んでいる時や辛い時に、クロマニヨンの彼らから知恵や夢、勇気を教えてもらっています。

この鉛筆漫画を描き始めてから、日々の生活の中で現在と過去を行き来することが当たり前になりました。1巻を出版して暫く私は、今と2万年前を行き来しながら2巻に現れるクロマニヨンの彼らを覗いていました。
エルカスティージョへ出掛けたまま、なかなか帰ってこないレイナ。暴雨と雷が酷くなってきた頃、心配になってきた恋人のタイスケは、後を追うようにエルカスティージョを目指して色んなところを走り回っていました。大雨の中、必死に探していたんです!頑張って走り続けていました。 不安を抱えながらも無我夢中で走りまくっていたら、

「あれっココどこ??」

なんと、2024年の下北沢アーツに来ちゃったみたいです。

ベロアの洞窟カーテン作品「クロマニヨンの夢」から見える「窓」。今回はタイスケがレイナを探すために一生懸命走ってきた2万年前の景色をキャンバスに描いて「窓」にしました。ん?...タイスケが知らない所もあるようです。

ともかく、レイナに無事に会えることを祈るばかりです。

内田麗奈

内田麗奈個展 クロマニヨンの夢「どこっレイナっ」下北沢アーツ編 展示風景
内田麗奈個展 クロマニヨンの夢「どこっレイナっ」下北沢アーツ編 展示風景

内田麗奈《クロマニヨンの夢「エルカスティージョの海」》, 2024年, ベロア生地,木材,キャンバス,油絵具,ピン,フック, 91×78×14cm
内田麗奈《クロマニヨンの夢「エルカスティージョ山」》, 2024年, ベロア生地,木材,キャンバス,油絵具,ピン,フック, 54×61×14cm
内田麗奈《クロマニヨンの夢「マンモスのいる風景」OPEN》, 2024年, ベロア生地,木材,キャンバス,油絵具,ピン,フック, 41×40×10cm
内田麗奈《はじまりはクロマニヨン「エカインの丘、夜」》, 2024年, 紙,色鉛筆,水彩,木材,額, 40×31×4.5cm

本展覧会の会期中に「はじまりはクロマニヨン」第1巻を弊廊でも販売いたします。加えて、下北沢の名物本屋「古書ビビビ」や「B&B」でもご購入いただけます。(「古書ビビビ」は3月中旬より店頭にて販売予定。)
本作は、漫画を描き始めたときの初期衝動と現存する人類最古の絵画である洞窟壁画から着想を得たことから「はじまりはクロマニヨン」と名付けられました。スケッチブックを1枚ずつ破り、全て鉛筆で描かれています。漫画でありながら1枚1枚を絵画としての強さも意識して制作され、作画はもちろんのこと、ストーリーもとても魅力的です。芸術に携わる方のみならず、何かしらの自己表現を志したことのある方には特に刺さると思います。 出版費用を集めるために行ったクラウドファンディングではたくさんのご支援を頂き、リターン企画として行った「あなたもクロマニヨン人⭐♪!似顔絵」の作品は、多くの方から好評を博したそうです。

「鉛筆漫画の実現」を目指した「はじまりはクロマニヨン」第1巻は、アート専門出版のアートダイバー出版社により、ページを捲るたび、手に鉛筆の粉が付くのではないかと感じる程のリアルな質感を高品質な印刷で実現しています。そして、いつの間にか読んでいる自分も2万年前の世界にワープして、レイナと一緒に自分の表現を探す旅へ。ポップに描かれた多様な登場人物とのコミュニケーションを楽しみ、レイナの喜怒哀楽を共に感じるうちに、不意をつく感涙に注意です。本展示をご覧になる前に「はじまりはクロマニヨン」第1巻をお読みいただいけますと展示をより楽しめること請け合いです。もちろん本個展をご覧になった後でもぜひ!

-内田れいな|『はじまりはクロマニヨン1』 https://artdiver.tokyo/product/hajikuro

-著者インタビュー:内田れいな「クロマニヨン人と私たちをつなぐ夢」

-はじまりはクロマニヨンinstagram https://www.instagram.com/hajimariwa_cromagnon/


内田麗奈(うちだれいな)

1993年 愛知県生まれ
2017年 名古屋芸術大学美術学部美術学科洋画2コース卒業
2019年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程油画第一研究室修了

好きな作家:手塚治虫、ウォルト・ディズニー、エドヴァルド・ムンク

個展

2023年 「はじまりはクロマニヨン出版記念展 ”私、明日からエルカスティージョに行くか も!”」(TAKU SOMETANI GALLERY、東京)
2022年 「クロマニヨンの夢」(TAKU SOMETANI GALLERY、東京)
2021年 「クロマニヨンの夢」(HIGURE 17-15 cas、東京)
2020年 「クロマニヨンの夢」(渋谷西武 Art meets Life、東京)

主なグループ展

2024年
「ON PAPER 」(TAKU SOMETANI GALLERY、東京)
「Expression Vol.3」(長亭gallery、東京)
2023年
「三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions」(千葉市美術館) 
※三沢厚彦氏を描いた「あなたもクロマニヨン☆♪!似顔絵」作品の提供。
「CHANGTING GALLERY 3RD EXHIBITION」(長亭gallery、東京)
「ブレイク前夜展 in 金沢『Now selection~ブレイク前夜』」(ASTER、金沢)
「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~ へ 」(GINZA SIX Artglorieux of Tokyo、東京)
2022年 「ON PAPER 」(TAKU SOMETANI GALLERY)
2019年 「SHIBUYA STILE vol.13」(西武渋谷画廊)

受賞

2017年
神山財団芸術支援プログラム
平成28年度名古屋芸術大学学生表彰 理事長賞受賞
第44回名古屋芸術大学卒業制作展 卒業制作優秀賞

出版

2023年「はじまりはクロマニヨン(1)」(アートダイバー出版社)