三成花奈個展「semi-fiction」

2023年12月13日(水) - 24日(日)
1-7 pm

休廊日:月・火曜日
入場無料
オープニング・レセプション:12月13日(水)6-8pm
*オープニング・レセプションはどなたでもご参加いただけます。

三成花奈《Semi-fiction》2023年、キャンバスに油彩、72 .2x60.6x5.5cm(F20)

下北沢アーツは、三成花奈個展「semi-fiction」を開催いたします。三成花奈は山口県生まれ、服飾専門学校卒業後アパレル業界で勤務しますが、絵を描くことを諦められず、2019年武蔵野美術大学造形学部油絵学科に入学、2023年同大学卒業。現在、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程に在籍中。卓越した写実表現で注目を集めている新進気鋭の作家です。
三成花奈の作品を最初に観た時、まず印象に残るのはその画力です。主に女性をモチーフとし、肌や髪の質感、温度、滴る水の冷たさまで伝わるような磨き抜かれた技量には目を見張るものがあります。三成は武蔵野美術大学在学中、約1年半の間イタリアの古典絵画を中心に模写に集中的に取り組み、飛躍的に技術力を伸ばしました。
そうして手に入れた表現力を用い、三成は自らのテーマである、存在や事柄に関する認識の相違、そこまでの選択の揺らぎを描いています。具体的には、三成が幼い頃、自身の出生に関するある事実を知らされたことにより認識が変化し、そのとき受けた衝撃が今も続いていることに基づいています。事実と虚構、現実と非現実の狭間の揺れ動きを表現するために、三成の制作は日常生活で行う動作を自身で演じることから始まります。その演技を何度か映像撮影し、パソコン上で繋ぎ合わせます。その“ドローイング”とも言える「半虚構」の映像をモチーフとし、丁寧にレイヤーを重ねて行き着いたのが三成の写実絵画です。絵画を制作する上でのレイヤーは日々の事象やその認識と重なり、出来上がった作品は下層が上層に影響し続けながら、現実そのもののように存在しています。
本展は東京藝術大学大学院進学後の初めての個展であり、自らの表現に改めて向き合った展覧会となります。絵の具の重なりから生まれた重厚な絵肌、内側から輝くような肌の表現、空間の歪みなど1点1点をじっくりとご高覧ください。そして、描かれた事柄について、その意味や場面などをぜひ想像してみてください。きっと三成の作品世界をより深く楽しめるはずです。

アーティスト・ステイトメント

道に転がるガラス瓶を見て、今ここに、この瓶が現れるまでにはどれだけの選択があったの だろうかと、考えつく限りの事象を遡る。
紀元前 2000 年ごろの古代エジプトの遺跡からガラス片が発見されているらしい。すると、この捨てられたガラス瓶に紐づけられた運命は、少なくとも 4000 年前から始まるということになるのだろうか。 誰かが企画し、大量に生産されたはずのガラスの一破片は、太陽の光を反射し、ブロック塀 に緑色の光を映している。土にまみれ、かつて店頭に並んでいたもののようには見えないが、 確かめようもない。

幼い頃、自身の出生に関する認識が二転三転させられることが起こった。その経験が根底にあり、いつしか存在・事象に対する認識の相違、そこに行きつくまでの選択の揺らぎへの関心を主題として絵画を制作するようになった。 これらの絵画の制作は、日常生活の動きを私自身が演じ映像に撮ることから始まる。その映像から数コマを抜き出して PC 上で繋ぎ合わせ、加筆や合成を繰り返し行うことで、時系列 や遠近の異なる事象が凝縮された半虚構ができあがる。その際に 被写体の 個人的特徴を削ぐことで、不特定な存在を作り出す。 キャンバスに描写の層を薄く積み上げながら描き換えていくことは、半虚構を現実世界に 再び引っ張り出して質量を持たせる、大切なプロセスだ。レイヤーを重ねるごとに虚構がリアルに近づいていく様子は、例え不確かな記憶でも繰り返し反芻するうちに事実として昇華されることに似ているのかもしれない。 この過程を経ることで、一個人が触れた事実であり虚構でもある事象を、質量が伴う絵画という状態で存在させたい。 作品を通して、世の中の多様な記憶に一瞬でも関われることを願う。

三成花奈《Attribute》2023年、キャンバスに油彩、134x158x5cm
三成花奈《贖い》2023年、木製パネル、白亜、油彩、65 .2x91cm(P30)
三成花奈《影》2023年、木製パネルに綿布、胡粉、石膏、白亜、油彩、22x27.3x2cm(F3)
三成花奈《帰する》2023年、キャンバスに油彩、32 .9x18.8cm
三成花奈個展「semi-fiction」展示風景

三成 花奈(みつなりかな)

山口県生まれ
服飾専門学校卒業後、アパレル勤務
2019 年 武蔵野美術大学 造形学部油絵学科油絵専攻 入学
2023 年 武蔵野美術大学 造形学部油絵学科油絵専攻 卒業、
東京藝術大学 大学院美術研究科修士課程 入学

好きな作家:ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ、ヴィルヘルム・ハンマースホイ、ローレンス・アルマ=タデマ、アンリ・ルソー、川瀬巴水

主な展示

2023 年
藝祭 2023「技法材料研究室」 東京藝術大学上野校、東京
個展「投影」一兎庵、東京
「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」 国立新美術館、東京
「2022 年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展」 武蔵野美術大学鷹の台キャンパス、東京
2022 年
「山本冬彦が選ぶ若手作家小作品展VII」ギャラリー枝香庵、東京
「ポラリス展」Gallery ARK、横浜
2021 年
「武蔵野美術大学油絵学科コンクール」 武蔵野美術大学、東京
「MOGA2021」 柴田悦子画廊、東京
「人物画展」 一兎庵、東京
ハンズボンフィルム映像展「ヤング☆ハンズボン展」 EARH+Gallery、東京 ・
「MOGA2021」 GALLERY ESSE 札幌
2020年
「NUDE 展 in 赤坂」 Bar 山崎文庫、東京
「Moonlight Serenade」Galerie La、東京
「五美術大学交流展小作品展」 Galerie La、東京
2019 年
「Micro Art Festival」 THE MICRO MUSEUM 東日本橋、東京
五美術大学交流展 2019「NEW AGE」 銀座洋協ホール、東京

受賞・奨学金

2023年
神山財団芸術支援プログラム奨学第 10 期生
2022 年
武蔵野美術大学校友会奨学生
2021年
「武蔵野美術大学油絵学科コンクール」 大谷たらふ賞、熊澤未来子賞、オーディエンス賞 受賞、武蔵野美術大学、東京
2019 年
五美術大学交流展 2019「NEW AGE」 丸善賞 受賞、銀座洋協ホール、東京