鈴木初音個展「傍のふるえ」

自ら育てた菊芋の茎から作る和紙、稲作で川底に溜まる砂を原料としたモルタル、集めた貝殻を焼いてできた石灰。
原材料を育て集めるところから描かれる図像まで、一貫した説得力のある作品で海外アートフェアや芸術祭参加など国内外で注目を集めている鈴木初音の新作個展。

2025年5月10日(土) - 25日(日)
1-7 pm

休廊日:月・火・水
入場無料
オープニング・レセプション*:5月10日(土)5-7pm
* オープニング・レセプションはどなたでもご参加いただけます。

鈴木初音《蜘蛛の巣》2025年, 檜, 菊芋, 楮, 種子, 酸化鉄, 刺繍糸, 58x74cm

下北沢アーツでは鈴木初音個展「傍のふるえ」を開催いたします。鈴木初音は1995年神奈川県生まれ、2018年多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、2020年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻壁画研究分野修士課程修了、現在東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻油画研究領域壁画博士後期課程在籍中です。
鈴木は幼い頃から、ふと今立っている歩いている自分は何者なのか、自分が何であるのかわからなくなってしまう事があります。その経験から、土に根を張り動かない植物を見て確実にそこにある存在がある、だから自分は間違いなくここにいるという感覚を持つようになります。同様に石が置かれた跡、何かが投げ込まれた後の波紋など、今も何かの存在とその周囲に自然と気が留まります。
また、鈴木は制作のための材料を自ら手がけます。育てた菊芋の茎から作る和紙、稲作で川底に溜まる川砂、貝殻を焼いてできた石灰。その行為は自らの制作の根源を追求する中で自然と向かったものです。溶かした茎の繊維を置き天日に乾かし、できた和紙にハンダゴテで点描画のように焦げを付けて描画します。また、セメントと砂で作ったモルタルに水を含んだ石灰を置き乾くまでの数時間で削り下の層を出すことで描くフレスコ画のグラフィート技法も用います。素材制作から図像まで一貫したその作品は大きな説得力を生んでいます。
幼い頃から持つ自分の存在が揺らぐ感覚を根底に自分の制作に誠実に向き合った作品は鑑賞者の心に刻まれ、近年では国内外でアートフェアや芸術祭にて作品を発表するなど、活躍の場を大きく広げています。自らの存在や制作行為に静かに深く向き合う鈴木初音の新作個展をぜひご高覧ください。

アーティスト・ステイトメント

ある場所で摘んだ花、
あの日拾った貝、
海の上に持ち上がった岩場。
植えた種は虫に食われていた。
今日ここに立っている自分は、いつから私になったのだろう。

私は小さい頃からふとしたときに、私であることを忘れてしまう。
瞬間的に失われたものは、次第にもとの姿を取り戻していく。
不透明な水が引いていき、そこにあったものが現れていくような。
そのうつわの境界が身体だとするならば、
取り巻くものにできるだけ触れていたいと思う。

鈴木初音《枝のまわり》2025年, 木パネル, 川砂, 貝殻石灰, 酸化鉄, 顔料, セメント, 80.3x65.2cm(F25)
鈴木初音《枝と鳥》2025年, 木パネル, 川砂, 貝殻石灰, 酸化鉄, 顔料, セメント, 50x50cm
鈴木初音《春の地面》2025年, 木パネル, 川砂, 貝殻石灰, 酸化鉄, 顔料, セメント, 30x110cm
鈴木初音《指と草》2025年, 木パネル, 川砂, 貝殻石灰, 酸化鉄, 顔料, セメント, 23x23cm

鈴木初音(すずきはつね)

1995年神奈川県生まれ。
2018年 多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2020年 東京藝術大学大学院美術研究科 絵画専攻 壁画研究分野 修士課程 修了
2025年 東京藝術大学大学院美術研究科 美術専攻 油画研究領域 壁画 博士後期課程 在籍中

展示
2025年
グループ展「Reborn いのちを織りなす アーティストたち」WHAT MUSEUM、東京
Art Basel Hong Kong 、GALLERY VACANCY、香港
2024年
ART021 Shanghai Contemporary Art Fair、GALLERY VACANCY、中国
芸術祭「清流の国 文化探訪 南飛騨Art Discovery」 岐阜
Paris International 、GALLERY VACANCY、パリ
グループ展「Canvas of a Narrative」WHAT CAFE、東京
グループ展「水面を覗く」下北沢アーツ、東京
2023年
二人展「枝をのばす、星でうなずく」谷中トタン、東京
Positions Berlin 、テンペルホーフ空港 格納庫 、ドイツ
二人展 「A Breeze of Fresh Air」MICHEKO GALERIE、ドイツ
個展「点滅を掬う」下北沢アーツ、東京
2022年
「ao展」アキバタマビ、東京
「奨学生美術展」佐藤美術館、東京
2021年
「絵画の筑波賞展2021 」スタジオ’S 、茨城& 西武池袋本店、東京
2020年
東京ミズマチ 壁画制作、ワイズアウルホステルズRiver tokyo、東京
個展「息をするとみえる」 ギャラリー美の舎、東京
2017年
「アタミアートウイーク2017~天つ風むすぶ熱~」 静岡県熱海市内、空き家

収蔵
2024年
ホスピス、グッドパートナーズ玉川学園、壁画、東京
南飛騨アートディスカバリー、下呂、岐阜
X Museum 、北京、中国
山口大学病院、宇部、山口
2022年
佐藤美術館、東京
2020年
東京ミズマチ、壁画、ワイズアウルホステルズRiver tokyo、東京

受賞
2022年
佐藤美術館 買上賞(東京)
2021年
絵画の筑波賞 優秀賞(茨城県、東京)

奨学金
2022年
日本文化藝術奨学生
2021年
第31期佐藤国際美術財団奨学生