Lea Embeli個展 Venus is the hottest planet
2025年8月22日(金)-9月7日(日)
1-7pm
休廊日:月・火・水
オープニング・レセプション*:8月22日(金)5-7pm
* オープニング・レセプションはどなたでもご参加いただけます。
online storeでも展示作品の一部をご覧いただけます。


下北沢アーツでは、Lea Embeli個展「Venus is the hottest planet」を開催いたします。Lea Embeliは1994年セルビア、パンチェヴォ生まれ、2017年ベオグラード藝術大学応用芸術学部応用絵画学科を卒業、2018年修士課程を修了。2021年文部科学省の奨学金を得て、東京藝術大学油画研究科に研究生として留学し、 2025年3月東京藝術大学修士課程修了。現在もセルビアと日本を拠点にアーティストとして活動を続けています。
Lea Embeliは新しい女性のイメージを探ります。女性のヴィーナス像はヴィレンドルフのヴィーナスや縄文時代の土器から現在まで各時代の価値観を反映させながら変遷を続けてきました。今の時代を映し出すためにEmbeliは必然的にAIを駆使します。象徴的な女性の画像を何度もAIに読み取らせることで、現代人が思い描く女性像を吸収し、無意識の理想や固定観念を反映した画像が生み出されます。その画像を基に制作されたEmbeliの作品は女性らしさの象徴ともされる鮮やかなピンクが多用され華やかな雰囲気を纏いますが、違和感を見逃すことはできません。
AIにより平準化されたヴィーナス像はこれまでの女性の身体を巡る問題がそのまま視覚化されたものと言えます。それでもEmbeliはAI像を他人の視線から逃れるための代理とすることはできないか、女性が自らの身体により自信を持ち生きるための方法を想像し続けています。
アーティスト・ステイトメント
レア・エンベリ
私は最近、特に最も古い粘土製の姿で表現されたヴィーナスの様々な形態に魅了されています。これらの先史時代の表現は、大胆な曲線と多様で表現豊かな形態言語を持ち、発見し分析する喜びをもたらしました。ホモ・サピエンスが初めて創造を始めたとき、女性の姿を彫刻しました。そして人間の性(さが)として、その姿は絶えず進化し、完成され、再形成され、何度も再解釈されてきました。
やがてその姿は現在の私たちの時代に至り、必然的にAIの領域へと入っていきました。
私は、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』をはじめとした美術史的資料や現代のポップカルチャーから様々なヴィーナスの姿を探求しました。その過程で、心に残る一例に出会いました。私は双子の誕生を発表したビヨンセの写真をAI画像生成モデルにアップロードしました。現代のヴィーナスを表すはずのその画像は、単に元の写真の色褪せたバージョンになるだけでなく、画像生成モデルに根付く偏見を露わにしました。
元の画像は、母性の象徴性と文化的特異性に満ちていましたが、それは平坦化されました。被写体はより淡くなり、無菌的で非現実的な光を放っています。体は左右対称に整えられ、エアブラシで加工されたような形に変わり、子どもたちは完全に消えてしまいました。そこに残るのは母性のイメージではなく、一般化された美と魅力の期待に応えるためのスタイライズされた姿でした。
一方で、非人間的な人工の代理像は、現実の身体が理想化の重圧から逃れられるという意味で一種の救済をもたらすかもしれません。代理像は、他者の客体化する視線を吸収するスポンジのように機能します。
しかし他方で、それは長きにわたり続いてきた表象と消去の問題を強化し、ほとんど変わることのないままです。かつて崇拝された、曲線美にあふれる女神であり母なる者は、達成不可能な理想の空洞のコラージュへと還元されてしまいました。
それでも私は問わずにはいられません。自分自身のために、この代理像を創ることはできるだろうか?
ひび割れ、不均一、多腕のヒドラ。グロテスクと美の境界で踊る者。
もしこの欠点のある身体が美しさを纏うことができるなら、自由は完璧さに縛られないのかもしれません。
もし私たちが身体を見る新しい方法を想像できるなら、
ヴィーナスをその熱く、燃え盛る栄光に取り戻すことはできるでしょうか?







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Lea Embeli
1994年セルビア、パンチェヴォ生まれ。2017年ベオグラード藝術大学応用芸術学部応用絵画学科を卒業、2018年修士課程を修了。
教育・科学・技術開発省とセルビアの若い才能のための財団より奨学金を授与される。学業成績優秀者に贈られる アレクサンダル・トマシェヴィッチ賞、応用絵画分野の ULUPUDS賞、若手アーティストに贈られるヴチュコヴィッチ賞を受賞。
2021年、文部科学省の奨学金(MEXT)を受けて東京藝術大学油画研究科に留学し、2023年4月から正規生として2度目の修士課程に進学、2025年3月に修了した。現在もセルビアと日本を拠点にアーティストとして活動を続けている。
絵画のほか、2016年からは「Zavod」や「Kreativni centar」、フランスの出版社「Fleurus」などで本の挿絵を手がける。また、セルビアのToBlink StudiosやポーランドのAnimoon Studiosなどのスタジオでキャラクターデザイナーやコンセプトアーティストとしてアニメーションの仕事にも携わる。また、2019年から2020年まで、ベオグラードの応用芸術学部で絵画技法のティーチングアシスタントを務めた。
主な展覧会
2025年
「ピテカントロプス」三越コンテンポラリーギャラリー、東京
「bridge」 biscuit gallery×NISO (ロンドン) コラボレーション展、東京
2024年
「Sorry, this is (not) for you」 Atami Art Grant 熱海、静岡県
「Grid Next」 biscuit gallery、東京
「Shibuya Awards」Hillside Terrace、東京
2023年
「Watowa Art Award」Watowaギャラリー、東京
「Beauty of Big Format」Salon of the Belgrade Museum、ベオグラード、セルビア
「未来展」日動画廊、東京
「どこにいて も、そこが家」JR上野ギャラリー、東京
2021年
「第 51 回芸 術サロン」国立美術館、パンチェヴ ォ、セルビア
2020年
個展「どう思う?」X Vitaminギャラリー、ベオグラード、セルビア
「芸術の秋ビエンナーレ」ソンボル、セルビア
「私的価値」スイスレジデンス、ベオグラード、セルビア
2019年
個展「Out of touch」Ostavinska ギャラリー、ベオグラード、セルビア
2018年
「Festum」学生文化センター、ベオグラード、セルビア
2017年
「This changes everything」ニシュ・アート・ファウンデーション、ニシュ、セルビア


