金子葵個展「魔法クラブ2」

実家の雰囲気、古代遺跡、廃れた温泉街など過去の美意識に共感し製作する。
画集や展覧会で観たポンペイ遺跡の壁画に心を奪われ、一部の作品に取り入れているエンカウスティーク技法が作品をミステリアスに強く印象付ける。

2025年7月2日(水) - 13日(日)
1-7 pm

休廊日:7/7(月)、7/8(火)
入場無料

金子葵《LOOP》2025年、木パネル、石膏、アクリル、油彩、72.7x60.6x5cm(F20)

下北沢アーツでは金子葵個展「魔法クラブ2」を開催いたします。金子葵は2003年静岡県生まれ、今年2025年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業し、現在東京藝術大学美術研究科技法材料研究室在籍中の新進作家です。
金子葵作品を特徴付ける艶やかで重みのある画面は古典技法に惹かれ始めたエンカウスティークや石膏地によりもたらされます。一見してインパクトのある金子作品ですが間近で観ると細部の書き込みや引っ掻きなどディテールも細かく見る度に新たな発見があります。モティーフは廃れた温泉街、バブル期の建築物、なぜか心に触れたなんの変哲もない住宅など。その美意識の根源は実家の建材、布、雑貨、服などにあり、金子は濃厚な人の営み、感情が蓄積された空気感に反応するように描きます。
若手作家金子の創り出す絵画は新しくミステリアスで同時に観る人に普遍的な懐かしさを感じさせます。郷愁の結晶のような金子葵の世界をぜひじっくりとご堪能ください。

アーティスト・ステイトメント

私の作品は絵画でありながら、短編のエッセイや物語のような側面も持ち合わせています。モチーフやコンセプトは、実際に目にした風景や自身の体験、そこで揺れ動いた感情から生まれます。

私は、かつてバブル期に栄えた観光地のある町で幼少期を過ごしました。今では人影もまばらになったホテルや、当時の名残をとどめる装飾が街のあちこちに残っており、栄華の痕跡とその後の静けさが同居するような空気に、子どもながらに強い印象を受けました。

また、ふと立ち寄った場所で、空気が妙に静かすぎたり、理由のないざわめきを感じたりすることがあります。そこに何があるわけでもないのに、思わず足を止めてしまうような空間の気配は、私にとって重要なモチーフのひとつです。

ビジュアル面では、廃墟や古びた風合い、伝統的な模様、バブル期の建築といった、時代を越えて残る過去の美意識から多くの影響を受けています。

技法においては、作品ごとに石膏地やエンカウスティークなど複数の素材を使い分けています。特にエンカウスティークには、素材としての質感に加えて、その技法が使われていた古代都市ポンペイの歴史に強く惹かれるものがあります。突然終わりを迎えた文明の痕跡には、バブル期の栄華が急速に失われていった建築の空気と重なるものを感じ、深いシンパシーを抱いています。

日常の中で、ふと足を止めてしまうような場面や感覚を、絵画というかたちですくい取ることを目指しています。

金子葵《Whisper》2025年、木パネル、石膏、アクリル、油彩、72.7x91x2.5cm(F30)
金子葵《カニ》2025年、木パネル、エンカウスティーク、油彩、53x45.5x2cm(F10)
金子葵《水槽》2025年、木パネル、エンカウスティーク、油彩、72.7x72.7x3cm(S20)

金子葵(かねこ あおい)
2003年静岡県生まれ。
2025年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
現在、東京藝術大学美術研究科技法材料研究室在籍中。

主な展示
2024年
個展「トリップBEST」Gallery Blue3143 ALPHA ET OMEGA 、東京
ART FAIR TOKYO、東京国際フォーラム、東京
2023年
個展「魔法クラブ」ボヘミアンズギルド 、東京
個展「Circus」穏田珈琲 ALPHA ET OMEGA、東京
2022年
3331アートフェア2022、3331 Arts Chiyoda、東京
point de depart、文房堂ギャラリー、東京
「BLISSFUL ABODE」haco、東京