伊山桂個展 Quiet as it's kept

2025年11月15日(土)- 30日(日)
1-7pm
休廊日:月・火・水
11/24(月・祝)は開廊
オープニング・レセプション*:11月15日(土)5-7pm
* オープニング・レセプションはどなたでもご参加いただけます。

伊山桂《Two: Quiet as it's kept》2025年、キャンバスに油彩、53x45.5cm(F10)

下北沢アーツでは伊山桂個展「Quiet as it's kept」を開催いたします。伊山桂は2001年岩手県盛岡市生まれ、2020年不来方高校普通科芸術学系美術コース卒業後、現在盛岡市にて制作を行なっています。2024年岩手県芸術・美術選奨賞に選ばれるなど、名実共に地元岩手を代表する若手作家です。
東北の自然と文化に親しみ、作ることが身近にある環境で育まれてきた伊山桂の制作活動は多岐に渡ります。絵画では油彩やアクリル絵具のみならず、自ら探究した画材として卵殻も取り入れています。支持体もキャンバスや紙はもちろんのこと作業机にそのまま描いたり、家のような作品を制作し、その後それを展開して展示することもあります。その他、編み物、刺繍、ラジオ、地元紙への連載、今年に入ってからは店長として盛岡市に雑貨店兼ギャラリーを開店。その全てが、伊山桂が自分自身、人、景色、本など関わった全ての物に素直に向き合い、内面から湧き上がる何かを真摯に見つめ、即興的に時に何年も時間をかけ「作品」にしたものに他なりません。鑑賞者は、肩の力が抜けているからこそ見える物事の本質を感じ取ることでしょう。
今の世の中を微笑みながら散歩する伊山桂の世界をぜひご体感ください。

アーティスト・ステイトメント

以前、イップスやトラウマを霊現象として考えてみたことがありました。霊(個人的な過去や世界的なこれまでの記憶)に捕まることでトラウマを持ってしまうのではないかと思ったのです。

ことのはじめは私がかなり霊感、というか霊勘を使って絵を描いている気がしていたからでした。筆を置く位置だとか、描く時間とか、とにかくなにかを、あるいは何かから我が身を庇うようにタイミングを見計らってこれまで描いてきました。そうするワケはそこここにいる霊に気づかれ、取り憑こうという変な気を起こされないようにするためだったのだと思います。これは「自壊」から逃れるために働く勘でした。しかし、いつも頭の隅には漠然と、それは良いことなのだろうかと疑問も抱いていました。「自壊」というチャンスを失っちゃいないかと。

私が生まれたその瞬間から世界は反省と効率化をすさまじい速度で同時に進行させている際中でした。反省の副産物である統計的な予測から反省対象を現し、その大元をなくしていく動きは確かな効率さで今日の世界に多大な利益をもたらしました。しかし同時に、語られえないことが語られる機会に蓋をして失ってきたものもあるのだと私は思います。(自壊もその一つでしょう。)

題名に冠した「Quiet as it’s kept」は作家のトニ・モリスンの小説「青い目が欲しい」冒頭の言葉です。「これは秘密なんだけれど」と訳される言葉は、秘密を抱くジェスチャーになっており、以降ささやかに、非常にゆっくりとした告白が続きます。そんな言葉に私は絵画や彫刻、造形物の存在を重ねます。描く、作る、見る。そのどれもが同じく秘密を抱くジェスチャーであり、自身や自身のようなものを崩す性格を持ちます。そして、それらは自身を紐解く行為にもなりうるのです。

話は霊に戻りますが、私は彼ら(霊)に追いかけ回されるべきな気がしてなりません。とはいえ逃げ切ることは勿論だとも思っています。しかしこの霊と自分との良い距離感を保ち続けることは容易いことではないでしょう。私はそんな霊とのシビアな間隔の間に大切にしたい仕事があるようです。

伊山桂《One》2025年、キャンバスに油彩、33.3x24.2cm(F4)
伊山桂《The Rhombus has dreams》2025年、キャンバスにアクリル絵具、31.8x41cm(F6)
伊山桂《Because the mountains are singing》2025年、木パネルにアクリル絵具、卵殻、45.5x38cm(F8)

伊山 桂(いやま けい)
2001年生まれ。盛岡市在住。人がモノを作る、みるということに興味をもつ。「そこにあること」をテーマに絵画を始め様々な形態の作品をその都度なじむ素材を使用して制作、発表を行っている。
好きな作家:菅木志雄、舟越保武、松本俊介、萬鉄五郎、ブルーノムナーリ

個展
2024年
「The Great Curve、名前はまだない」implexus art gallery、岩手県盛岡市
「伊山桂展」Art + half studio、岩手県八幡平市
「伊山桂 特集」Cyg art gallery、岩手県盛岡市
2023年
「伊山桂展」川徳ギャラリー、岩手県盛岡市
「伊山桂展 HOLE」 企画画廊くじらのほね、千葉
「変わらないトーンおかえりのターン」彩画堂S-SPACE、岩手県盛岡市
2022年
「伊山桂展 伸びる真空管」 企画画廊くじらのほね、千葉
「伊山桂個展 遠景のドキュメント」implexus art gallery、岩手県盛岡市
2021年
「伊山桂個展 太陽の正位置」implexus art gallery、岩手県盛岡市
2020年
「RELATIONSHIPs」彩画堂S-SPACE、岩手県盛岡市

グループ展
2025年
「阿部潤 伊山桂 入夏七海」KAMAWANAI Gallery、岩手県盛岡市
「North wind project Vol.4 Wandering paper:紙の上の冒険」石神の丘美術館、岩手県岩手町
2024年
伊山桂・もりさこりさ「Bush Bush」下北沢アーツ、東京 
「114才の会話」A.R.T shop 2nd YPG ANNEX、岩手県雫石町
2023年
「asterisc」旧石井県令邸、岩手県盛岡市
2022年  
「クリスマス金の板展」(美術家、柴田有理と共同企画)彩画堂S-SPACE、岩手県盛岡市
「うたの心 -絵筆に託す-展」東京九段耀画廊、東京
「Future Artist Tokyo:SHIP」東京国際フォーラム、東京
2021年   
「Cygnus parade」Cyg art gallery、岩手県盛岡市
「Art Field Iwate 2021」盛岡市中央公園、岩手県盛岡市
「プリン同盟20周年記念展」石神の丘美術館、岩手県岩手町
2020年 
「Cyg SELECT  2020」Cyg art gallery、岩手県盛岡市
 「la eclosion」ギャラリーAN、岩手県水沢市

受賞
2024年 岩手県芸術・美術選奨

文章
盛岡ミニコミ誌「てくり」にて「経点」を連載中
2024年「リレーエッセイ遊歩道」岩手日報社